まずことの経緯を整理しましょう。インスタートのウッズの最終ホールである9番ホールのセカンドショット。9番アイアンで打ったボールがギャラリースタンド、カート道をはねて、クラブハウスの屋根にまで届く大オーバーとなりました。ピンまで167ヤードの位置から9番アイアンで打って、グリーン奥のスタンド、さらにクラブハウスの上まで飛んでいる……ゆうに200ヤード以上飛んでいるという考えられないショット。そしてそのボールの行方がわからなくなったわけですね。
で、みんなで探し回ったけどわからない。しかもクラブハウスがOBゾーンではないというのが今回のキーポイント。これがOBゾーンだったらセカンドショット地点から打ち直しということになって、このホールのスコアがもう1つ増え、ウッズの優勝はなかったでしょう。しかしそうではなかった。
ここで運営サイドから疑惑の裁定がくだります。ウッズのボールはOBではないと合理的に立証できる(ボールの行方はわからないが、見ていた人間の証言からそれがOBではないのは確実だ)として、クラブハウスやギャラリースタンドは動かせない障害物だから、その救済措置をとれるという裁定です。結果、ドロップゾーンから無罰ででプレーしたウッズはこのホールをボギーで上がります。
何それ?と思うのは私だけでしょうか? どんな状況であれ、ボールの行方がわからなかったら紛失球でしょ。OBでないのが確実なのと、ボールの所在が不明なことはまったく関係がなく、どうしてそのような裁定になるのかが理解できません。しかも、運営サイドはこんなことを言っています。「ボールを探せる5分が経過する前に立証できる証言が得られている」と。ウッズは打ち直すまで30分も裁定を待っていて、その間にボールは見つかっていない。なのにロストにならない。どう考えてもおかしいでしょ。誰がなんと言おうとボールはないんだから。
実際にそのボールはどこにあったかといえば、クラブハウスの屋根にはねた後、反対側まではねていました。そのとき、クラブハウスのスタッフがパイの積み卸しをしていたのですが、そのカートにボールが飛び込んだんだそうです。そのスタッフはまさかプレー中のボールだとは思わずに、カートについていたカップホルダーにボールを入れて、他の場所に配達にいってしまった。そりゃあ探しても見つかりませんよねぇ。
見つからないんだから紛失球。これがルールからすれば当たり前の考え方ではないでしょうか。木の上にひっかかっているボールが見えても、自分のボールかどうか確認できなかったら紛失球になります。同伴競技者のボールと並んでいて、どちらが自分のボールだかわからなかったら紛失球になります。なのに、ボールがないのになぜ紛失球ではないですか? 理解できません。
以前、一人ではとても動かせない大きな岩をルースインペディメントとして動かしたなんてことがありましたが、ウッズによってルールが変わってしまうというのは許されるんでしょうかね。ルースインペディメントに関してはその後のルール改訂のときに変更されましたけど、今回のケースは今後に反映されるんでしょうかね。優勝したといってもちょっと後味が悪い気はしますが、まあ、そういう裁定をくだした運営側が悪いんであって、ウッズが悪いわけではないのでウッズを責めるのは筋違いですね。
余談になりますが、今回の件を調べていて、またメディアのいいかげんさを目の当たりにしました。ロイターは「2打目がクラブハウスに当たりロストになった」と報じています。ロストではない。夕刊フジは「ギャラリースタンドに飛び、カート道ではねて姿を消した」と書いています。ボールがクラブハウスの屋根にはねたのはテレビ中継でも映っているのに。さらに「いくら探してもボールはみつからず10分後」との記載。10分経ったらロストでしょ。おまけに「クラブハウスのバルコニーに飛び込み、そこにいた子供がポケットへいれてしまった」というデタラメさ。
メディアが書いたことを信じる人は多いんですから、もうちょっとなんとかなりませんかね……。
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